その21 箱千畳
『伽羅先代萩』などで、御殿の奥に大広間が現れるときがあります。これを「千畳(せんじょう)」と呼びます。
千畳の形状には2タイプあり、平面に絵で描くものと、半立体に作った「箱千畳(はこせんじょう)」があります。
この千畳は奥のほうに飾られるので、客席からの存在感はあまりないと思いますが、近くで見るとかなりのボリュームがあります。
襖は金地、銀地。畳の色などにも気を配りながら色を塗り、丁寧に製作しています。
その20 くもで
大道具には、小さなサイズの道具もたくさんあります。今回は、庭に置いてある小さな台「くもで」をご紹介します。
その19 あおり(転換の手法)
大道具の転換には多くの種類があり、場面ごとにふさわしい技法で転換をしています。ハイテク技術が発達した時代ですが、歌舞伎では人と人との間合いや呼吸、芝居の流れを大切にしており、多くの場合、人の力で動かしています。
そうした人力による「転換」のひとつに「あおり」があります。大臣囲いにつけられた絵を本のページをめくるように折り返して絵を変化させます。あおりは原則として舞台の外側から内側へ折り返します。これは裏方の顔が客席に向かないようにとの配慮もあります。
その18 転換の種類「引きわり」
『女暫』の冒頭に登場する回廊です(2015年1月公演)。
奴たちが上手にはけると、この回廊は中央から左右に分かれて上手(かみて)と下手(しもて)にはけてなくなります。この転換を「引きわり」とよびます(大道具の転換担当者が人の力で動かしています)。
写真は「道具調べ」の際に、「引きわり」のタイミングや動きをチェックしているところです。
その17 道具帳
歌舞伎の大道具は「道具帳」と呼ばれる1枚の絵を基に製作されています。舞台を真正面から見たときの完成図のようなもので、1/50の縮尺で場面ごとに一枚ずつ描かれます。
写真は『寺子屋』の道具帳を描いているところです。
その16 上敷(畳敷)その2
大道具では畳の部屋をあらわすときに「上敷(畳敷)」という長いゴザを用います。読み方は「じょうしき」です。今回は、転換の際の上敷の扱いについて、ミニレポートをしてみます。
以下の写真は、『伊勢音頭恋寝刃』の場面転換の練習風景です(2014年9月末の道具調べで撮影)。
廻り舞台(盆)を使って、裏側に飾ってある奥庭の場面にするのですが、上敷が邪魔にならないように盆の内側に寄せます。素早くきれいに寄せるのは、新人にとってはなかなか難しい様子。先輩が何度もお手本を見せて、指導していました!
【大道具の道具】 上敷(畳敷)その1 はこちら
http://kabukizabutai.co.jp/saisin/odougunodougu/1578/
その15 小道具さんとの役割分担(『関の扉』編)
小道具と大道具の役割分担については、「引っ越しで持っていけるものは小道具、持っていけないものは大道具」というのがおおまかな目安ですが、曖昧なものもたくさんあります。常磐津舞踊の大曲『関の扉』にも、そういう道具がありますので、クイズを作ってみました。
【大道具・小道具、どっちクイズ】
以下は、『関の扉』の道具です。1〜4のうち、小道具さんが担当されるものは、どれでしょうか?
(答えは、このページの下のほうにあります)
1:桜の樹木の花
2:つり下げられている雲
3:桜の小枝
4:高札
【答え】
1:桜の枝は、大道具が受け持ちます。
2:この雲は小道具さんです!
(演目によっては大道具が担当する雲もあります)
3:この小枝は、役者さんが手に持ちますので小道具さん。
4:この高札は、大道具。ただし、『熊谷陣屋』のように役者さんが手に持つものは小道具さんで作られます。ちなみに『京鹿子娘道成寺』の高札は大道具の担当です。
というわけで、正解は2と3でした。雲や高札は、私たちでも「あれ、どっちだっけ?」というものもありまして、今回も小道具さんに確認に行ったりしましたよ。雲は特に難しいですね。
その14 睡蓮
『恐怖時代』奥庭の睡蓮です。
造花の担当者によると、睡蓮と蓮は混同されがちですが、植物学的には異なるためいろいろ調べて準備したとのこと。睡蓮は、葉に切れ込みがあり、花は水面にぽこっと浮くようにして咲きます。また、睡蓮の花が歌舞伎に登場することは、珍しいとのことでした(『恐怖時代』の上演自体、ずいぶん久しぶりです)。
その13 唐子台
『正札附根元草摺(しょうふだつきこんげんくさずり)』の「唐子台(からこだい)」です。
側面は金地に松竹梅のおめでたい柄が描かれています。
その12 ロープ
舞台の脇に置いてあるこの不思議な引き出し。これは、舞台転換を行う大道具が使うロープ入れです。
さっと取り出せるように、からまないようにして箱の中に入れておきます。素材は綿で、色は白と黒。
両手を広げると6尺くらいの長さになり、自分の身体をものさしがわりにして、必要な長さをはかって使っています。