360年、毎日が創意工夫 歌舞伎座舞台株式会社360年、毎日が創意工夫 歌舞伎座舞台株式会社

社員紹介
先輩×後輩インタビュー

各職場で働いている社員が、日々の仕事内容や現場の雰囲気、入社当初の様子などを語りました。

「劇場ではたらく」

専門職「幕引き」
幕の開け閉めにも必要な芝居心

先輩:小池有三

昭和47年生まれ。22歳で大道具の世界に入り、舞台転換の仕事に就く。その後、幕引きも担当するようになり、現在は幕引きのトップである幕長を務める。

後輩:遠藤翔

平成5年生まれ。中央工学校工業専門課程エンターテインメント設営科科卒。入社、6年目。舞台転換の経験を積んだ後、幕引きも担当するようになる。

一般の演劇では、上下に幕が開閉する緞帳(どんちょう)が主流ですが、歌舞伎の幕の基本は古風な定式幕。人の力で幕を開け閉めする「幕引き」はどんなお仕事ですか。
小池:電動ではなく、人の手で幕を開け閉めするには理由があります。歌舞伎では、幕も芝居に合わせて「演技」をしています。たとえば、演目によって幕を開けるスピードを変えますし、同じ演目でも俳優さんによって幕を閉めるタイミングが異なる場合もあるんです。「幕引き」も芝居心がないとつとまりません。
大きな幕ですから、力も必要そうですね。最初のうちは、どんな風に練習をするんですか。
遠藤:歌舞伎座は間口が広いので、それだけ幕が重くなるんです。最初のうちは、力もありませんし、コツもわからなかったので、幕を引ききることができずに、花道のあたりで止まってしまっていました。
練習は、終演後の舞台でやっていました。最初は、幕の持ち方から教えてもらったんですが、まだ身体もできていなかったし、雪駄にも慣れなかったので、立っているだけでも、しんどかったですね。

小池:今、歌舞伎座には僕も入れて5人の幕引きがいるんですが、遠藤は「幕引きになりたい」と言って入ってきてくれたんですよ。すごくうれしかったですね。とても意欲的に仕事を覚えてくれますし、面倒そうな仕事も文句を言わずにやっていて、えらいなと思います。
幕引きにとって、大事なことはなんでしょうか。
小池:「幕を引くのはセンスが必要」と言われたりもするんですが、僕は努力のほうが大きいと思います。幕引きは、俳優さんとのコミュニケーションも大切ですから、人との接し方なども気を配れることが大事です。
遠藤さんの目標は何ですか。
遠藤:僕も、小池さんのように、技術的に安定して幕が引けるようになりたいです。それから幕を引いているときは、幕が揺れないほうがきれいなので、気をつけるようにしていきたいです。
確実な仕事をして一緒に働いている仲間にも認められたいですし、僕より下の人たちからは頼られる存在になりたいです。
遠藤さんに、どんな風になってもらいたいですか。
小池:意欲をもってコツコツ勉強を積み重ねていく人と、そうでない人だと、時間がたつとすごい差になってきます。まだまだこれから伸びていくところも大きいですし、地道に勉強をして、俳優さんをはじめ関わる全ての人に信頼される幕引きになってほしいですね。

(この記事は、2019年12月に取材した内容に基づいて作成しています)
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