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『仮名手本忠臣蔵』の大道具 「道具帳」

歌舞伎座では11月、12月に二ヶ月連続で『仮名手本忠臣蔵』が上演されます。知っておくと観劇がちょっと楽しくなる豆知識を、道具帳をご覧いただきながらご紹介したいと思います。

【四段目 表門城明渡しの場】
四段目 城明渡し

由良之助が仇討ちの決意を固め、城館を明け渡して去っていく場面の大道具です。遠ざかっていく風景を「引き道具」というちょっと変わった手法で表現します。最初は上の道具帳のように道具が飾ってありますが、ゆっくりと道具を舞台後方に引いていきます(下の道具帳)。少し角度がつけてあるのは、花道の七三にいる由良之助に対して門が直角に向くようにするためです。芝居の雰囲気に溶け込むように、動かす速さやタイミングにも心を配ります。
同じ場面でも、関西型の演出では表現方法が異なります。同じように背景が遠ざかっていく様子を表すのですが、実際に道具を後ろに動かすのではなく、背景画の図案を近景から遠景に変えることで門から遠ざかったことを表します。

【七段目 祇園一力茶屋の場】
七段目 茶屋場
京都祇園町を舞台にした華やかな場面。歌舞伎では家などの立体物を屋体(やたい)と呼び、屋体の形や舞台から建物の床までの高さ(大道具ではこれを「足」とよびなわらす)は各演目・場面ごとに決まっています(中央の屋体は、「高足(たかあし)」という高さ)。屋体にかけられている階段は三段の白州梯子(しらすばしご)。上手(かみて)の屋体は、お軽の部屋で二階という設定です。この場面では様式的な動きがあるため舞台の上に「所作台(しょさだい)」という檜の板を敷き詰めます。
下の道具帳は同じ場面ですが、のれんが開いたところで、その奥に見える風景は俳優さんの意向に合わせた図案を描きます(よく見ないと気付かないくらいの微妙な違いですが)。
ちなみに、この場面でも関西型では道具が異なります。中央の屋体の「足」は関東型よりも七寸(約21cm)低く、それに従って階段の段数が一段少なくなります(白州梯子ではなく石の階段)。また、屋体の色味や塀の柄なども異なります。

11月、12月の歌舞伎座の公演では全て関東型で上演されます。一般的に、関西型の演出は写実的、関東型は様式的といわれ、小道具や衣裳、かつら、そして大道具もそれに準じているとされています。

歌舞伎座
吉例顔見世大歌舞伎
平成25年11月1日(金)~25日(月)
http://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/2013/11/post_68.html

十二月大歌舞伎
平成25年12月1日(日)~25日(水)
http://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/2013/12/post_69.html

2013/10/17
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